来客予測AI”の開発者は、パソコン初心者の接客担当。

2019年1月27日
office

秋吉 しのぶさん / SHINOBU AKIYOSHI

有限会社ゑびや(伊勢市)
接客担当
業種:飲食、小売、卸売

株式会社EBILAB(伊勢市)
データサイエンティスト見習い
業種:システム開発

PROFILE

夢は「旅人をもてなす旅館の女将」。その修行の一環として、伊勢でITシステム開発に取り組む食堂『ゑびや』に入社。学生時代に身につけた英語・中国語・韓国語などの語学力を武器に、食堂の“おもてなし担当”として活躍。2018年、MicrosoftのITセミナーへの参加がきっかけで“機械学習”に魅了され、自称「パソコンオンチ」から社内のシステム開発に参加。社内外の協力を得て機械学習モデル“来客予測AI”を完成させる。

私の使命

飲食店の悩み。“翌日の来客数”を当てる挑戦。

2017年に伊勢神宮の内宮へ参拝した人は、およそ580万人。内宮の門前町で食堂を営む『ゑびや』には、毎日多くの客が食事にやって来ます。店の長年の悩みは、“明日はどれだけの人が来るか”。創業から約100年間、職人の勘だけが頼りでした。しかし2018年、店はAI技術を用い問題解決に成功。食堂のフロア係だった秋吉さんは、接客と並行してシステムづくりに参加しました。「実は私はパソコンオンチ。半年前までパソコンを持っていなかったほどで!」。開発を振り返り、明るく笑う秋吉さんが完成させたのは“来客予測AI”。翌日の来客者総数と、どのメニューがいくつ注文されるかを、90%を超える確率で的中可能だといいます。

伊勢〜北海道〜沖縄を結びボーダレスに開発。

『ゑびや』は2016年から、来客数や天気などのデータを蓄積。来客予測システムの開発に着手していました。秋吉さんは2018年に、Microsoftのセミナーへ参加。「そこで初めて機械学習を知りました」。機械学習とは、いま話題の“AI(人工知能)”に繋がる技術。「私にとっては、初めてのことだらけ。ですが教材を参考に数式を入力すると、すぐに結果が表示され『私にもできた!』という喜びを味わえました」。それから秋吉さんは、仕事の合間を縫ってパソコン漬けに。「IT顧問やエンジニアとの会議にも参加するようになりました。北海道から沖縄まで、さまざまな技術者とビデオ会議をしながら技術を向上させています」。

私流リーダーシップ

現場を盛り上げ、“楽しく操作に慣れる”

秋吉さんは、自身の持ち味を「サービス精神旺盛なところ」だといいます。学生時代に英語・中国語・韓国語を学び、海外でのボランティア活動にも参加。そのサービス精神は、『ゑびや』の来店客だけでなく、社内に対しても発揮されているようです。「来客予測システムと、職人さんの勘で導き出した数字に、隔たりが出ることもあります。立派な職人さんほど“勘”に誇りを持っていらっしゃいますし、その気持ちはよく分かります」。秋吉さんは彼らの声によく耳を傾け、システム開発者として“楽しく明るく”理解を呼びかけたといいます。「操作が怖い」という熟練社員の心情にも寄り添いました。「何より私自身がパソコン初心者ですから!」。

接客担当、AI技術者、そして新たな挑戦も。

秋吉さんが開発に参加したシステムは、『タッチ・ポイント・BI(ビーアイ)』という商品名で、2018年11月に全国発売されました。スマホ・タブレットにインストールすれば、SNSのように誰でも簡単に操作できるとか。商品化以降、秋吉さんの役割は「開発者」から「データサイエンティスト」になりました。「顧客店舗様の来客データも分析します」。食品ロスが減ることを願い尽力した『ゑびや』の来店予測を、他店でも高い的中率で運用できるよう調整しています。旅館の女将になるために『ゑびや』で働き始めた秋吉さんですが、「それよりも、今の仕事が楽しくて!」。秋吉さんはエンジニアとしての腕を磨きながら、ソムリエの資格取得にも挑戦中です。

社外メンターとして

お話&アドバイスできる内容

■人材育成
■AI・システム活用

こんな講演・相談に対応できます

■『タッチ・ポイント・BI』の紹介
■来客予測システムの開発秘話と仕組み解説
■サービス業の現在・未来
■データ収集のための接客術

所属事業所概要

有限会社ゑびや
三重県伊勢市宇治今在家町13
http://www.ise-ebiya.com
社員数: 55名

株式会社EBILAB
三重県伊勢市宇治今在家町13
https://ebilab.jp
社員数:7名

私の癒し

『ゑびや』で働くみんなの顔を見るのが私の楽しみであり、パワーの素です。プライベートでも食事に行ったり、悩みを聞いてもらったりと、私の家族のような存在です。
それと、お酒が好きなので美味しいお食事と日本酒があれば、悩みのほとんどは消えてしまいます。
夫が星付きの一流ホテルでフレンチシェフをしていたので、自宅でも美食三昧で暮らせているのが本当に幸せです。
2018年11月 取材


インタビュー概要PDFはこちらから>>