テーマ
笑って考えるワーク・ライフ・バランス〜男の家事が社会を救う〜
スピーカー
瀬地山 角 さん(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
内容
基調講演はジェンダー論の研究者である瀬地山さんに登壇いただき、男性の家事・育児参画が、女性・男性・企業へどんなメリットをもたらすかお話しいただいた。
瀬地山さんははじめに、共働き世帯の家事関連時間について、週平均1日あたり「男性46分、女性4時間54分」であると紹介し、男性の著しく短い家事時間は社会的に問題にすべき水準と指摘。また結婚相手に求める条件についての調査結果から、女性は男性に対し「家事・育児の能力」や「自分の仕事への理解」を求めているという現状を紹介された。
また、将来専業主婦になると思っている女性が1割を切っており、パートナーに専業主婦になってほしいと思っている男性も1割しかいないことに触れ、男性だけが稼ぐ大黒柱モデルはもはや崩壊しており、社会制度や働き方を見直さなくてはならない段階にきていると指摘した。
さらに、夫婦で家事・育児を分担し、妻が出産後も正社員として働き続けることは、「1億円の宝くじに当たったことと同じ」「男性の家事労働は時給4千円と換算でき、残業代よりも高い」とユニークな視点から男性の家事・育児参画がもたらすメリットを説いた。
また、企業が短期的な利益を追求するあまり、男性に長時間労働を強いている点にも言及。男性の方が自殺率が高い点にも触れ、男性こそワーク・ライフ・バランスを見直すべきだと提言。すぐに行動できることとして、「有給休暇を利用し男性も産休5日間取得」「残業時間を見える化し全員で共有する」ことを挙げた。
最後に経営者へのメッセージとして「社員に給与で報いるのは難しい時代。これからは休暇で報いることが人材定着につながる」と解説。また、ダイバーシティの取組は「配慮ではなく、優秀な人材の確保につながる経営的に合理的な選択である」と話し、締め括られた。
テーマ
プロフェッショナル〜ダイバーシティ経営の舵取りがもたらしたもの〜
登壇者
竹延 幸雄 さん(株式会社竹延 代表取締役社長 (株式会社 KM ユナイテッド 創業者))
西岡 慶子 さん(株式会社光機械製作所 代表取締役社長、 博士(工学))
ファシリテーター
瀬地山 角 さん
内容
トークセッションでは、ダイバーシティ経営で躍進する2社の中小企業経営者に登壇いただいた。まずは各社の事業内容や、ダイバーシティ経営の導入手順を紹介いただき、話題は人手不足を打開するための人材募集や人材定着の工夫に発展。最後はダイバーシティ経営を目指す県内事業者への激励メッセージをいただいた。
はじめに2社いずれも男性主体の体制が長く続いた前提を説明した上で、現在は多様な人材が活躍する企業であることを紹介。ダイバーシティ経営のきっかけについて、竹延さんは、人手不足とベテラン職人の高齢化により、このままでは技術伝承が困難になるという危機感から、新たな枠組みでの人材発掘に着手。従来の現場OJTで塗装職人を育成する方法に限界を感じ、「誰でも3年で一人前に育て上げられるよう」育成方法を刷新したと紹介。
一方、西岡さんは、当時は男性・理系が中心で同質性の高い文化や風土であったことから、会社存続への危機感を持ったことを振り返り、さまざまなタイプの人材が集まり新しい発想でものづくりをしていく必要性を感じたと語った。また、前職時代に米国企業に就職した日本人女性達の声を聞き「責任のある仕事を通して活躍したいと願う女性は日本国内にたくさんいるはず」とトップ自らの考えや求める人材を広く発信したことを紹介いただいた。
続いてファシリテーターの瀬地山さんから「女性の職場定着」について質問が投げかけられた。竹延さんは、シンナーの使用をやめ、すべて水性塗料に変えたことを例に挙げ、「もはや社内には性差を感じさせる環境はなく、性差を感じるとすれば、それは外部の環境である」と話し、妻が働くことを夫に理解してもらうための取組として「夫婦同席面接」を実施していることを紹介。一方、西岡さんは、「仕事をする上で一番大切なことは『プロ』であることを究めること」と話し、男女も世代も問わず「プロ意識に徹すること」をスローガンに掲げ社内文化を変えたことを紹介いただいた。
さらに瀬地山さんからは、ワーク・ライフ・バランスについて解説があり、「仕事と子育ての両立支援」と「男女平等に扱う均等支援」を両立させることが重要であると説明。また、女子学生の就活バイブル「就職四季報・女子版」は男子学生にも必見の1冊であると紹介し、「女性の既婚率」「女性の勤続年数」「女性管理職者数」などに着目すれば、誰もが働きやすい「ホワイト職場」が浮かび上がると解説いただいた。
最後に、登壇者より経営者に向けたメッセージが贈られた。竹延さんは「自社を理解してもらうため、ハローワークの職員や高校教諭が何に困っていてるかを捉え、悩みを共有し協働した」という自身の取組を紹介し、経営者を激励した。
西岡さんは社外・女性・外国人など多様な人材が工作機械の開発に参画したことで、機械の使い易さが向上し商品力がアップしたことを紹介し、ダイバーシティがもたらす経営へのインパクトの大きさを語った。そして、三重のダイバーシティの一層の推進を願い、トークセッションは締め括られた。
立会人
石川 雅恵 さん(UN Women日本事務所長)
登壇者
三重大学学生・県内で働く若手社員
・菊池 太郎さん(三重大学医学部2年)
・浦北 理沙子さん(株式会社赤福)
・渡部 裕斗さん(三重大学医学部1年)
・北前 直也さん(三井生命保険株式会社 三重支社)
・林 雅明さん(三重大学生物資源学部2年)
・桑山 采さん(三重大学大学院生物資源学研究科博士前期課程2年)
各界リーダー
・雲井 敬 さん(公益財団法人三重県文化振興事業団 理事長)
・伊藤 惠子 さん・齋藤 彰一 さん(女性の大活躍推進三重県会議 共同代表)
・鈴木 英敬 (三重県知事)
「HeForShe」とは、国連機関「UN Women」のリーダーシップにより、「ジェンダー平等」を推進するために男性を含めたすべての人々が関わることを求める社会連帯運動のこと。UN Women日本事務所長・石川雅恵さんがこの取組を紹介し、登壇者がそれぞれにジェンダー平等を目指すためのアクションを宣言した。
三重大学の学生、県内で働く若手社員からは「誰もが大好きなことを追求できる社会を作りたい」「女性店長やスタッフの活躍のために、男性社員の理解や支えがあることに感謝」「昔の価値観を変えるのは僕達」「頑張る人は輝かしい。誰もが輝ける社会を創造したい」「恋愛とは異なる男女の人間関係を構築し、考え方の溝を埋めたい」「私達は『変わり目』の世代」など、明るい未来に向けたメッセージが発信された。
このメッセージを受け石川さんは「自分達の行動は次世代につながる」と彼らに激励のメッセージを贈った。
三重県内の各界リーダーからは「女性参画は男性の理解から広がる」「ジェンダー平等は家庭から。まずは男性も家事の大切さを知ろう」「生涯現役で私達も輝きましょう」とHeForShe賛同メッセージを表明していただいた。
最後に鈴木英敬知事からは「私にとってのSheは妻と2歳の娘。輝く妻を応援すると共に、2歳の娘がハンデやバリアを感じないで生きられるよう環境づくりに努めます」とアクションの表明があった。
最後に石川さんは来場者にもHeForSheの賛同を要請。インターネットのサイトから簡単に賛同できることを紹介した。
三重県で働く女性のさまざまな挑戦を称え、応援することを目的に、3回目となるアワードを開催した。
今年は「~応援してくれる人がいるからがんばれます!~」という副題を設け、何らかの挑戦に燃える県内で働く女性を募集。応募のあった73人のうち、事前審査を通過した10人のファイナリストが3枚のスライドで各自5分間のプレゼンテーションを実施した。
栄えある「みえモデル賞」は、尾鷲市で訪問介護のリーダーとして活躍しながら、准看護師などさまざまな資格を取得し、現在はレストラン事業にも挑戦中の楠珠里さんのプレゼンテーション「理想の職場に出会えた私~仲間とともに伝えたい~」が選ばれた。会場の投票により決定する「オーディエンス賞」は、派遣社員からスタートし、経営陣を巻き込んだ社内改革に挑戦している横関美香さんのプレゼンテーション「風土改革で、みんなが幸せになればいいじゃん!」が、最も共感し、心を動かされたモデルと評価され受賞した。その他スポンサー企業からは、企業のコンセプトに合ったファイナリストたちにそれぞれの賞が贈られた。
NO |
所属 |
氏名 |
プレゼンテーションタイトル |
---|---|---|---|
1 |
有限会社ゑびや おもてなし責任者 兼 |
秋吉 しのぶ |
サービス産業に革命を起こす! |
2 |
株式会社浅井農園 |
呉 婷婷 |
留学生農学博士が農業の跡継ぎベンチャーに就職し世界を目指す |
3 |
だんだんキッチン 代表 |
大須賀 由美子 |
「災害時の人的被害ゼロ」を胸に刻んで |
4 |
ミサワリフォーム関西中部株式会社 |
加藤 果林 |
育休ママに勇気を! |
5 |
特定非営利活動法人あいあい 副理事長 |
楠 珠里 |
理想の職場に出会えた私 |
6 |
中部電力株式会社 |
小林 聖子 |
お客さまに満足してもらえる仕事を |
7 |
株式会社JSK |
生野 幸 |
働き方の工夫で、どの立場の人でも活躍できる社会創り |
8 |
御浜土地改良区 事務局長 |
永田 ゆかり |
みかん農家の駆け込み寺〜営農よろず相談所の誕生〜 |
9 |
株式会社萬来トレーディングコンサルタント |
山川 裕未 |
一般事務職から部長へ! |
10 |
光洋メタルテック株式会社 |
横関 美香 |
風土改革で、みんなが幸せになればいいじゃん! |
秋吉 しのぶさん
(有限会社ゑびや おもてなし責任者 兼
株式会社EBILAB データサイエンティスト見習い)
『サービス産業に革命を起こす!伊勢からはじまる私の挑戦』
呉 婷婷さん
(株式会社浅井農園 研究開発部 研究員)
『留学生農学博士が農業の跡継ぎベンチャーに就職し世界を目指す』
大須賀 由美子さん
(だんだんキッチン 代表)
『「災害時の人的被害ゼロ」を胸に刻んで』
加藤 果林さん
(ミサワリフォーム関西中部株式会社 リーダー)
『育休ママに勇気を!~復帰準備の場「育休カフェ」定例開催の挑戦~』
楠 珠里さん
(特定非営利活動法人あいあい 副理事長 兼 株式会社OCK Ba-mi 取締役)
『理想の職場に出会えた私~仲間とともに伝えたい~』
小林 聖子さん
(中部電力株式会社 電力NWCP三重支社 総務部付
中電配電サポート株式会社 出向 三重支社スタッフ 副長)
『お客さまに満足してもらえる仕事を効率的に行える仕組み作り』
生野 幸さん
(株式会社JSK 不動産部門 専任宅地建物取引士)
『働き方の工夫で、どの立場の人でも活躍できる社会創り』
永田 ゆかりさん
(御浜土地改良区 事務局長)
『みかん農家の駆け込み寺~営農よろず相談所の誕生~』
山川 裕未さん
(株式会社萬来トレーディングコンサルタント 営業部長)
『一般事務職から部長へ!三重と世界を繋ぐコンサルに挑戦中』
横関 美香さん
(光洋メタルテック株式会社 人事部 多様性推進グループ 主任 兼 人事グループ 主任)
『風土改革で、みんなが幸せになればいいじゃん!』
◆ 本県を代表する働く女性のロールモデルとしての価値を提供し、地域への広がりが期待できるモデルに対し授与する賞
◆ 表彰状並びに賞金30万円、「チャレンジャーズ・アワード」トロフィー
◆ 当日の来場者の審査により、最も共感し、心を動かされたモデルに対し授与する賞
◆ 表彰状並びに賞金10万円、「チャレンジャード・アワード」トロフィー
岡田パッケージ賞:横関 美香さん ◆ 慣例にとらわれることなく声を上げる勇気と、 ◆ 表彰状並びに「牛銀本店 松阪肉すき焼ペア食事券&しぐれ煮・肉みそセット」
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三十三フィナンシャルグループ賞:呉 婷婷さん ◆ 最先端技術を取り入れたベンチャー事業に従事し、 ◆ 表彰状並びに「株式会社三重銀行及び株式会社三十三総研ホームページ掲載
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三重交通グループホールディングス賞:小林 聖子さん ◆ 女性の参画が少ない分野で、女性ならではの視点を生かした ◆ 表彰状並びに「三交イン全店舗の宿泊券4枚」
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赤福賞:山川 裕未さん ◆ グローバルな視点を有し、新しい環境にも臆することなく ◆ 表彰状並びに「おかげ犬サブレ5箱と、おかげ横丁商品券 1万円分」
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あいおいニッセイ同和損害保険賞:大須賀 由美子さん ◆ 命の重さと向き合い、「生きる力」「生き抜く力」を育むため ◆ 表彰状並びに「鳥羽シーサイドホテルペアご宿泊券」
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国際ソロプチミスト三重賞:生野 幸さん ◆ 自身のハンディを乗り越え、その経験を糧に誰もが活躍できる社会をめざし ◆ 表彰状並びに「毎年6月に贈呈式を行う国際ソロプチミスト三重賞の受賞権として5万円」
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サティスホーム賞:永田 ゆかりさん ◆ 男性中心の組織の中で、自身が貢献できることを懸命に模索し、 ◆ 表彰状並びに「グループ会社のヴィエルジュのエステ無料券(5回分)
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百五銀行賞:秋吉 しのぶさん ◆ 新たな手法でサービス業の価値を高め、地域活性化に貢献されていることを評価し授与 ◆ 表彰状並びに「株式会社百五銀行及び株式会社百五総合研究所の発刊する情報誌
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エイベックス賞:加藤 果林さん ◆ 自分自身の経験を糧に、働く女性の悩みに寄り添う取組を ◆ 表彰状並びに「桑名工業高校とコラボし制作したオリジナルボールペン
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井村屋グループ賞:楠 珠里さん ◆ 「こんな上司が職場にいたら、毎日仕事に行くのが楽しいだろうな」 ◆ 表彰状並びに「オリジナル招福ようかん 3本入×100セット」
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